オーガニックワインの醸造ではメタカリを使わずに伝統的な二酸化硫黄を極少量使っているため、温度管理をせずに流通した場合、すぐに劣化して異臭が出ます。ビオ臭と呼ばれ、オーガニックワインに特有だと説明するメディアがありますが、間違いです。しかし残念ながら温度管理に無関心な流通が大多数なため、日本市場ではほとんどのオーガニックワインが劣化しているのは事実です。また無添加ワインという商品が見られますが、これは加熱殺菌して酵母の死骸をミクロフィルターで取り除いたもので、ビン詰め後は熟成することなく劣化するだけのものであり、本場のヨーロッパでは存在せず、日本独特の健康市場に向けた、オーガニックとはまったく別の工業製品なのです。
ヨーロッパでは1950年代から民間団体がオーガニック認証を始め、80年代には国家認証、90年代にはEU共通認証となり、本物をしっかりと守るきびしい監査システムがあります。EU政府のオーガニック農業助成制度もあり、オーガニック生産は拡大の一途を辿っています。2000年代に入り、本物志向が強まりミシュラン三ツ星レストランではオーガニックワインを必ずリストするようになり、この傾向はどんどん広まっています。2009年にはEU共通のオーガニックワイン醸造認証も導入され、一層本物を見極めやすくなります。近年自然派ワインと称する商品が喧伝されていますが、生産者が「自分は自然な生産をしている」とか、「ビオディナミ農法を行っている」と言っているだけで認証制度もなく、信用できるものとは言えません。オーガニックの理解が薄い日本の流通業界では「自然派ワインはオーガニックワインよりも優れている」と間違って伝えられていますが、まったく逆です。
オーガニックワインは、香料の補正を行わないため、生産者の考え方や技術水準が顕著に顕れ、「オーガニックだからおいしい」という訳ではありません。あくまで嗜好品ですから自分の好みにあったものを選んではじめておいしいのです。家族や友達や恋人とおいしく楽しく飲みながら、そして環境や社会のことまで心を向けるライフスタイルへの入口となるのが本物のワイン、オーガニックワインです。

PROFILE
田村 安 (たむら やすし)
マヴィ(株)代表取締役
NPOヨーロッパオーガニック協会(EUOFA)代表理事
オーガニックフェスタ実行委員会代表
フランス政府農事功労賞シュバリエ受勲
1958年京都生まれ。1998年にオーガニックワイン専門インポーターのマヴィ㈱設立。2000年にヨーロッパオーガニック協会を設立。著書の「オーガニックワインの本」(春秋社刊)でグルマン・クックブック・アワード日本書部 門2004年ベストワインブック賞受賞。