一方、消費者はオーガニック製品が安全な品質というベネフィットを自分達に提供してくれることを認知するようになった。しかし、可処分所得が低く、価格に敏感なドイツの消費者は、すぐにオーガニック製品には飛びつかなかった。当時、平均して40〜50%は高いといわれていたオーガニック製品、とりわけ問題となった牛肉の値段には大きな開きがあったからだ。高所得者層や有識者は、生鮮食品の一部をオーガニック製品に切り替えていったが、多くの消費者は牛肉を買い控えたり、代替製品でしのぎを削ったのである。ある調査結果によると、ドイツでは生活費の約12%が食費となっており、ヨーロッパの中でもエンゲル係数が低い国に数えられている。通常の食品よりも高いオーガニック食品、ましてやオーガニックコスメや衣料を購入するという決定にまでは至らなかったのだ。
第3の波は、2007年にスーパーマーケットやディスカウントストア、ドラッグストアーといった量販店が市場に参入したことで始まった。競争が激化していた量販店は、他社との差別化を図るため、手頃な価格のプライベート・ブランドのオーガニック製品をOEMにより企画・販売するようになった。基準は低いが、認定を持つオーガニック製品、しかも低価格。これらグッドバリュー戦略に基づくプライベート・ブランドを、ドイツの消費者は試し買いするようになった。2007年、ドイツのオーガニック市場の規模は一気に底上げされた。
ドイツオーガニック市場の現状
オーガニックの裾野が拡がった2007年。オーガニック業界をここまで牽引してきた食品部門の2007年度の業績を紹介したい。ボンに本拠を置くZMP(市場ならびに価格に関する調査会社)の報告によると、2007年度のオーガニック食品の売上げは約55億ユーロ、前年度比約20%増。2008年度の売上げは約58億ユーロ、前年度比約10%増となっている。また、2007年度の食品関連の売上げの内、オーガニック製品の占める割合は、僅か3%となっている。市場全体から見ると、オーガニック市場はまだまだニッチな市場と言わざるをえない。
さらに2007年以降、様々なリサーチ機関が市場に関するデータ収集を行うようになった。業界が長期に亘って安定した利益を得られるよう、消費者ニーズを観察することに力を注いでいることにも関係しているのであろう。自社の資源を、どの消費者グループや、どのような新しいニーズに対応させていくのかを決める拠り所となる。ここで、いくつかのリサーチ結果を紹介しながら、ドイツのオーガニック市場の現状をさらに詳しく見ていくことにする。
PROFILE
浅野・レッケブッシュ 経緯子
ニュルンベルク大学経営学部在学時より国際見本市、ドイツ企業や日本企業の商談通訳に従事。現在は、国際見本市に出展する企業のサポート業務やビジネスコンサルティング業務を中心にドイツと日本にて活動。