多くの自然化粧品メーカーは、㈰から㈯の化粧品作りに要する成分は、安全性が高いとわかっている自然素材を使おうと努めてきた。㈫の色素は、鉱石や植物の色素を使い、㈬の香料はエッセンシャルオイル、㈭の溶剤は水かアルコール、㈮の油剤は、石油ではなく植物オイル、㈯は、昔から使われてきた整肌作用のある植物を配合するというように。
しかし自然化粧品にとって難問は、㈰の防腐と㈪の界面活性剤をどうするかということだ。石油原料の合成成分を使えば、防腐も乳化も簡単なので、いくつかの植物エキスを配合した上で、合成防腐剤と合成界面活性剤を使って仕上げる自然化粧品も少なくない。
ちなみに界面活性剤とは、本来は混ざらない水と油を混合する機能がある成分だ。これはシャンプーや洗顔フォームの洗浄成分になったり、あるいはクリームや乳液をなめらかに混ぜ合わせて乳化するための成分である。
環境先進国ドイツで始まった自然化粧品の認証基準
環境先進国ドイツでは今、数々の自然化粧品メーカーが世界から脚光を浴びるようになってきている。1996年、これらの自然化粧品メーカー16社が、「BDIH」(ドイツ医薬品、化粧品商工企業連盟)の自然化粧品の基準作りに乗り出した。そしていよいよ2001年から「BDIH」の自然化粧品の認証制度がスタートした。
2007年、7月、日本の環境NGOの一員として私は、ドイツのビジネス都市マンハイムにあるBDIH本部を訪れた。「BDIH」の会長によると、「『BDIH』の基準は今ではドイツだけではなく、ヨーロッパやアメリカでも知られるようになっています」とのことだった。
彼のインタビューの中でとくに印象に残ったのが次の言葉だった。
「BDIHの基準は、自然化粧品の認定であり、オーガニック認定ではありません。ドイツではナチュラルコスメという言葉はよく聞きますが、オーガニックコスメという言葉は聞いたことがありませんね」。
そのときはすでに日本ではオーガニックコスメが、新聞や雑誌で取り上げられるようになっていたので、それは小さな日本だけのことなのかと拍子抜けしたように感じた。
合成防腐剤は使わなくても自然化粧品はできる
「BDIH」の基準作りでは、5年もの歳月をかけて、どのような防腐剤や界面活性剤などを許容するのかなどについて討議を重ねたという。
今のドイツの自然化粧品メーカーの製品を眺めてみると、防腐剤に関しては、すでに合成防腐剤にたよらない製品作りをしている。たとえば抗酸化力の高い植物エキス、防腐効果のあるエッセンシャルオイル、エタノールなどによって防腐効果を実現している。
また日本の自然化粧品メーカーでも、合成防腐剤を一切使うことなく、製品を作り出しているところは数少なくない。つまり今や多くの自然化粧品メーカーは、合成防腐剤に頼ることなく、製品を作るレベルに達しているといっていい。
PROFILE
水上 洋子(みなかみ ようこ)
日本オーガニックコスメ協会 代表
同志社大学卒業。1980年、『素敵な朝帰り』(角川書店)発表して、作家としてデビューする。その後、「恋愛以上」、「ユニコーンによろしく」、「恋愛コレクション」「もう一度プラトニックラブ」(角川書店)、「ハーフムーン」(講談社)「楽園作り」(講談社)、「月がくれた愛人」(幻冬舎)、「女神が遺した国エジプト」など、女性の生き方と環境をテーマにした著書50冊以上。現在、環境とオーガニックをテーマにした株式会社「アイシス」の取締役もつとめる。